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子どもの気持ちは?

  • 執筆者の写真: 洪均 梁
    洪均 梁
  • 9月5日
  • 読了時間: 6分

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 家を出ました。離婚調停を申し立てました。婚姻費用、平たく言えば生活費を支払えという調停も申し立てました。

 すると、夫は子どもと会わせろという調停を申し立てました。面会交流調停ってやつですね。

 

 と、ここまで読んで、なんだかこの文章読んだことがあるなとお考えのあなた、確かにここまでは前回と同じ文章。一生懸命読んでくださってありがとうございます。怠慢だって思わないでくださいね。ここからは前回とは違います。

 

 子どもが父親と会いたがらないケースは珍しくありません。子どもに暴力を振るっておいて、それをすべて否定して、面会させろという方もいらっしゃいます。子どもに暴力を振るわなくても、目の前で母親がさんざん殴る蹴るをされて、しかもそれが度重なっていた場合、そんなときには子どもが会いたがらないのは当然のように思えます、

 

 そこまでいかなくても、同居していたときに母親が父親との関係でさんざん悩んでいたところを見て、別居ということになった場合、子どもとしてはアンビバレンツな思いに悩まされることになります。

 父親への愛着はあるものの、母親にも愛着がある。生まれたらすぐにおっぱいを飲ませてくれたのは誰でしょう。汚れたおむつを換えてくれたのは誰でしょう。泣いていれば最初にあやしてくれたのは誰でしょう。母親への愛着は男女を問わず、特別なものがあると思いませんか?日本の兵隊さんは死ぬ瞬間に「天皇陛下万歳」と叫んで死んでいったことになってますが、本当は「おっかさん!」と叫んでいたとの記録を読んだことがあります。アメリカ兵だって「マミー!」と叫んでいたとも書いてありました。洋の東西を問わず、男はみんなマザコン?

 そんな最愛の母親を苦しめていたのです。父親への愛着は無条件なものではなくなるでしょう。憎しみを感じているとしても不自然ではないのでは?

 

 もちろん、母親の気持ちを推しはかることもあるでしょう。「お父さんに会うって言ったら、お母さんはいやな気持ちになるんじゃないかな。」という感じに。でも、一番大事なお母さんの気持ちを考えるのは当然では?

 

 会うのがいやじゃないけど、もう少し時間がほしいということもあります。

 

 弁護士としては母親を通じて、子どもの意向を確認します。子どもが会いたくないと言えば、調停でそれを主張します。「会ってもいいけど、もう少し時間が・・・」というようなときにも、そう主張します。

 

 でも、父親がそれで引き下がることはまずありません。たいていの場合、「それは母親の意向だ。」とか、「母親がそう言わせているんだ。」だのと言い出します。

 

 お父さん方の自信にはおそれいります。子どもの目の前でさんざん母親に暴力を振るっておいて何針か縫うケガまでさせておいて、「子どもは自分に会いたがっているはずだ。」と思い込んでます。もちろん、暴力を振るった事実は否定します。でっち上げだとか言い出します。父親がそんなことを言っていると知った子どもはどう思うでしょうか。目の前で見ていたことです。父親は嘘つきだと思っても仕方ないでしょう。一緒に暮らしていた頃には「ウソをつくんじゃない!ウソをつくやつなんか人間として最低だ!とかえらそうに言ってたのに。

 事件によっては、ケガの写真もあります。診断書もあります。大声で怒鳴り続ける様子の録音があることもあります。それを証拠として提出すると、さすがに頭から否定することはしないようになりますが、今度は頭に血を上らせて、まともな話し合いができなくなることもあります。

 

 お父さんの言うとおりに「それは母親が言っているだけだ。」なんて口走る若い、特に男性の弁護士さんの自信にもおそれいります。

 子どもの親に対する感情にも様々なグラデーションがあります。愛着もあれば、嫌悪もある。愛憎あい乱れるといった場合もあるでしょう。

 そんな微妙な心理も理解しようとせず、自分の依頼者に都合がよいように、「それは母親が言わせてるだけだ。」と決めつける。父親からあることないこと母親の悪口を聞かされていれば、なおさらのこと。ないことを前提として、子どもが母親の言いなりになっているはずだとの理屈をこねたりします。

 でも、子どもの気持ちは理屈じゃないんじゃないですか。こうした弁護士さんは子どもの微妙な気持ち、複雑な気持ち、アンビバレンツな気持ちなんかを理解しようとしないようにも思えます。そんな方がこねた理屈が家裁で尊重されるもんでしょうか。

 家裁の調査官の方々には心理学を修めたりして、人の心理への深い洞察力を持っている方が多いようです。そんな方々に対して「親子なんだから会いたがっているはずだ。会いたくないなんて母親が言わせているだけだ。」なんて言っても、意味があるんでしょうかね。

 

 そんなお父さんだの弁護士さんだのの発言が子どもにストレートに伝わるものではありません。ただ、調停などを通して、母親には伝わります。面会交流は子どもがするものだけに、母親もお父さん側の意向を子どもに伝えなければならないといった局面があります。そんなときに、子どもが自分の偽らざる気持ちとして「もう少し時間が・・・」と言ったのに、それを父親とその弁護士が頭から否定していると知った場合、子どもはどんな気持ちになるでしょうか。

 

 父親は自分の意向を否定して、無理にでも会おうととしている。そんな父親にどんな気持ちを持つでしょうか。

 もちろん、父親にそれなりの愛着を持っていれば、現実に会ってみれば和気あいあいといったような雰囲気になることもあるでしょう。

 ただ、それまでにはいろいろ思うことがあるはずです。

 

 子どものいない夫婦が離婚調停で罵り合うとしても、それはその場でのこと、離婚が成立してしまえばもう赤の他人。思い出そうとしなければ、思い出さなくてすみます。

 でも、子どもと親の関係はそれからも長~~~く続きます。将来の子どもとの関係に気をつかってもよいのではないでしょうか。

 お父さん方の中には子どもの微妙な気持ちなど考えずに、面会交流の調停なんて制度があると、それに飛びつく人もいるようです。申し立てて、断られたりすると頭に血が上ります。こうなると、子どものためではなく、妻との勝ち負けの問題ととらえてムキになる方もいらっしゃるようです。

 でも、家裁では面会交流は父親のためではなく、子どもが健全に育つための制度であるととらえています。家裁の調停委員だの、調査官だの、裁判官だのに「このお父さんは子どものことは考えてないんじゃないか?奥さんとの勝負に勝つことが一番大事みたいだな。」なんて印象を与えることが得策であるとは私にはとても思えません。

 

 少し時間を置いてあげることも考えてみてはいかがでしょうか。




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