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木村弁護士の一人言

 「結婚は人生の墓場」なんて言葉がありました。だったら、離婚は墓場からの復活だということになるでしょうか。

 若い女性の中には結婚がゴールだと思っている方もいらっしゃいます。愛し合って結ばれた二人。相手をきっと幸せにするという誓い。自分もきっと幸せになれると信じて結婚します。華やかなゴール

 でも、とんでもない人と結婚した場合、そこから苦しみの日々が始まる場合もあります。神父様の前で、相手を幸せすると誓ったはずなのに、自分が幸せになることばかりに一生懸命で、相手の苦しみが全然想像できない人もいます。同居した途端、モラハラするわ、暴力振るうわ、この人本当に同一人物かなとか思ってしまう場合もあるようです。

 そりゃ、我慢しますよ。永久に愛し続けると誓ったんだから。子どもがいれば、その子のためにと思って、我慢します。でも相手はあなたが限界ギリギリの我慢をしているのに、それにまったく気付いていない。そんなことが当たり前だと思ってます。

 我慢に我慢を重ねている間に、なんとなくそれなりに夫婦の形ができてしまう場合は多いのでしょう。でも、我慢に我慢を重ねて限界に達する場合もあります。女性が我慢の限界に達して、家を出た場合、元の鞘に戻ることはあまり期待しない方がいいでしょう。夫の方は妻の苦しみに気付いていないので、青天の霹靂!あの優しくて、尽くしてくれた妻がどうしたことか!なにかの間違いに違いない。謝れば許してくれるはずだ。きっとそうだ。この偉いオレが滅多に下げない頭を下げるんだ。あいつも感動して帰ってくるに違いないなんて思いますが、遅すぎます。この段階に来て、いくら謝っても、妻は帰ってきてくれません。愛想がとことん尽きて、その上で散々我慢してから別居したのですから。

 女性だけじゃありません。なんにでもしつこく口を出してくる奥様。夫が自分の意のままに動かないと、そうなるまでしつこく言い続ける人っています。その度に夫は苦々しく感じても、じっと我慢しているのに、奥様はそれに気付いていない。たまに夫が言い返して口論になっても、最後は夫が折れる場合もあります。そんなときに、雨降って地固まったと思う奥様。違います。夫は奥様に嫌悪感を募らせてます。地固まるどころか、地滑り寸前。それに気付かないで、「そんなに私の言うこときかないんなら、離婚するわよ。出て行きなさい!」夫、すぐに出て行きます。渡りに船ってとこですね。妻、呆然・・・。いつも私の言うことを聞いてくれたあの人がどうしたことかしら。とりあえず謝っとこうかしら。結婚以来、一度も頭を下げたことのない私が頭を下げるのよ。あの人も帰ってくるに違いないわ。子どももいるんだし。いいえ、間違ってます。帰ってなんかきません。

 

 精神的にボロボロになり、やっとのことで別居にこぎつけました。毎日のように暴力を振るわれたりしていたのに、暴力のない生活に。毎日、相手の顔色をうかがってびくびくしない平穏な生活。毎日のように、相手から「お前はバカだ。」とか「あんたはほんとに稼ぎのないダメな人ね。」とか言われて、プライドがぼろぼろになっていたのに、そんなふうに否定されない生活。別居前と比べれば、貧しくても落ち着いた幸せな生活。

 あんな人と同じ戸籍に入ってるのは嫌だから、とっとと離婚したい。離婚すれば、児童手当ももらえるし。

 確かに離婚後の生活の不安はある。これまで夫の控除の範囲内でしか働いていなかった。子ども抱えて、暮らせるのかという不安はもちろん。しかし、これまで人格を否定され続け、自分への暴力で子どもたちも怯えて暮らしてきた。妻への虐待は、子どもへの虐待。子どものことを考えても、離婚するしかない。法律では父親は子どもの養育費を払わなきゃならないってことだし、財産分与とか慰謝料とかももらえるかも。なんとかなるかな。でも、すんなり行くかな。もうあの人と会うのはまっぴらだし、電話で話すのもいやだ。

 こんなときは弁護士を立てるってことは知ってるけど、知り合いに弁護士なんかいないし、偉そうでいやな人だったり、変な人だったらどうしよう。それに、目の玉の飛び出るような費用がかかったらどうしよう・・・

 知っている弁護士はいるけど、友だちなんで逆に相談しにくいという場合もあります。医者と弁護士は友人には持っておきたいけど、できれば世話になりたくありませんよね。

 

 相談に来てください。私は偉そうでいやな人ではありません。というように思ってるけど、不安だったら、電話に出た事務員にそう聞いてみてください。「そちらの弁護士さんは偉そうでいやな人ではありませんか。」って。後で事務員がボクのことどう思っているか聞いておかないと・・・。

 まずはお電話をして、打合せのアポを入れて下さい。私の事務所では初回の相談については、相談料をいただかないのがほとんどです。

 仕事があるので、夕方以降でないとという方がいらっしゃいます。私の事務所では7時から打合せを入れる場合もあります。朝7時ではありません。

 子どもを預けておくところがないという方もいらっしゃいます。連れてきてください。私の事務所には子ども、特に赤ちゃんの相手をするのが大好きな事務員がいます。赤ちゃんが来ると、その日一日幸せそうな顔してます。

 アポを入れたら、その日に備えて、簡単なメモを作っておくと、打合せが早く進みます。結婚した日、お子さんが生まれた日、別居した日、相手の我慢できないところ等です。できる範囲で結構です。相手からのモラハラを思い出すだけ涙が噴き出してきて、メモなんか書けないという人もいます。あくまでもできる範囲で結構です。

 それに、戸籍謄本も取ってきてもらえると助かります。

 相談して弁護士に任せたいと思っても、費用が気になります。弁護士の費用が安いとは言えないでしょう。ただ、私も報酬もらわないと私も食べていけませんので・・・。

 一括で支払えない場合、分割にしていただく場合があります。最初にいただく着手金を思いっきり小さな金額にして、事件が解決した場合にいただく報酬金を割増しにしていただく場合もあります。

 それもむずかしい場合、法テラスというところに援助を申請することもできます。あまり貯金がなくて、収入も低ければ、援助してくれます。援助決定が出ると、着手金という最初に弁護士に支払うお金を立て替えてくれます。あとは毎月5000円だの、1万円だのを返していきます。

 

 相談の中で、相手になにを要求するかを検討します。事ここに至れば、離婚はもちろんマストです。親権は必ずこちらのものにしなければなりません。子どもの養育費ももらわなければなりません。相手に資産があれば、財産分与という形で分けさせることも法律上可能です。散々つらい思いをして我慢してきたのですから、慰謝料ももらわなければ、気がすまないでしょう。相手方が厚生年金だの共済年金に入っている場合、年金分割もしてもらいまょう。散々尽くしてきたのですから、老後の支えぐらいはもらわないと。

 離婚が成立するまでに何年もかかる場合もあります。離婚するまでは自分と子どもとの生活費、婚姻費用って言いますが、それももらわなければなりません。

 その要求事項を考えたら、戦術を考えます。

 

 いきなり家庭裁判所に調停を申し立てることもできますが、私はまずは受任通知という書面を送ります。予告なしに調停なんか申し立てると、相手も感情的になって、解決がむずかしくなります。それに、相手が離婚もやむを得ないと思っている場合、裁判所に行くまでもなく離婚が成立する場合もあります。

 受任通知というのは、私があなたから委任を受けたので、今後は私に連絡してくださいという内容の書面です。同時に、あなたに直接接触することを控えるようにとの要請も書いておきます。その後は私が窓口になるわけです。それでも、相手方が直接あなたに電話したり、訪ねてきたり、子どもの学校に行ったりするような場合、裁判所に仮処分という決定を出してもらって、そんな行為を禁止することも法律的には可能です。

 相手方がストーカー行為に及べば、処罰の対象になります。公安委員会にストーカー行為の禁止命令を出してもらうことも検討の対象になります。禁止命令に反すると処罰の提程度が重くなります。

 相手方にDV行為があったのであれば、裁判所に保護命令を出してもらえることもあります。近づくなとか、住居のまわりをうろつくなとか、無言電話をかけるなとかの命令です。これに反すると処罰の対象になります。

 

 こうして、私が交渉の窓口になりました。私は相手にこちらの要求を伝えます。また、財産分与には相手方が持っている資産を把握して、その価格を算定することも必要になります。その資料の開示も要求します。コピーを送れというわけですね。

 送ってくる人がいます。送ってこない人もいます。送ってくれば、話合いを進めます。最終的に納得のいく解決案、和解案って言いますが、それが得られたら、その内容を書面にします。

 公正証書を作る場合もあります。たとえば財産分与の内容を公正証書にしておけば、相手が約束を守らない場合、強制執行ができるようになります。給料の差押ができるわけです。それだけに、こちらが離婚を求める場合、それに同意することはなかなかありません。

 

 相手方が離婚に応じない場合、財産に関する資料のコピーを送ってこない場合の慰謝料の支払いに応じない場合、その他こちらが納得できるような解決ができない場合、いよいよ家庭裁判所です。

 

 家庭裁判所に調停を申し立てます。離婚を求める調停と婚姻費用、生活費ですね、それを求める調停の二つを同時に申し立てる場合がほとんどです。

 申立書やその他の書類を作る必要があります。準備に少し時間がかかります。申し立てると、1ヶ月後とか1ヶ月半後とかに調停の第一回期日が決まります。あなたの都合は予め私に言っておいてください。何日とか何曜日は仕事の都合でどうしても裁判所に行けないとか、そんな事情です。

 

 第一回期日の日が来たら、定められた時間に家庭裁判所に出頭します。相手と会いたくないですよね。家庭裁判所はそこも配慮しています。申立人、すなわち、あなたの待合室と相手方の待合室が別になっています。ただ、裁判所のロビーで出くわすという可能性はあります。重度のPTSDを発症した人なんかは、ロビーで相手方の顔を見た途端、走って逃げるといったケースもあります。それが嫌であれば、たとえば30分前に私の事務所に来ていただいて、一緒に裁判所に行くなんて方法もあります。いくら乱暴な人でも、裁判所のロビーで弁護士がガードしている妻に暴力を振るうなんてことはしません。そもそも、妻に暴力を振るう夫は、外面はよくて、権威に弱いといったお人柄の方が多いようです。妻に暴力を振るうからと言って、第三者にも当然暴力を振るうといったものではないようです。とは言っても、恐いですよね。

 私の事務所に来ていただくという方法は東京家庭裁判所限定です。それ以外の家庭裁判所の場合には、どこかで落ち合って、一緒に行くという方法もあります。

 

 家庭裁判所に着いたら、待合室で待っています。東京家庭裁判所の待合室は1時半頃はいつも満員です。みんな濃厚接触。待ってると、調停委員が呼びにきます。

 調停室という部屋に連れられて行きます。大きなテーブルが置いてあります。6人から8人程度が囲めるテーブルです。調停委員が2名います。呼びに来てくれた調停委員ともう一人です。男女2名のペアです。

 

 いつの頃からか、家庭裁判所では、初回の調停は当事者双方を調停室に同席させて、調停委員から調停とはどんなものかを説明するという取扱いを始めました。その方が調停、すなわち合意ですが、その調停が成立しやすくなるんだそうです。

 私に言わせれば、ナンセンスです。あなたはひどいDVを受けていました。散々殴る蹴るされていて、そんな相手の顔も見たくないと思って、家を出てきました。そんな人と同じ部屋にいることはそれ自体苦痛であるはずです。それなのに、同席を強いるとはとんでもないことです。そもそも、調停がどんなものであるかについては、調停を申し立てる前に私が十分説明しておきます。

 ですから、私は事前に同席させることはやめてくれるようにと家庭裁判所に連絡しておきます。それでも同席せよとは家庭裁判所も言いません。

 

 調停室に入ると、調停委員が自己紹介してくれます。特に職業を明かすなんてことはしませんが、普通、一人は弁護士、一人は弁護士ではない人です。

 調停員にはいろんな人がいます。ていねいに接してくれる人がいます。堅苦しい人もいます。逆に親しみやすいひとがいます。偉そうなひとがいます。庶民的なひとがいます。あなたの気持ちをよくわかってくれていると思わせるひとがいます。女性の痛みに鈍感ではないかと思わせる人がいます。こちらの気持ちを尊重してくれる人がいます。上から目線で自分の解決策を押しつけてくる人がいます。どんな調停委員にあたるかは運としか言いようがありません。

 

 あなたが離婚を求める場合、調停委員に離婚したいと思う理由を説明します。ただ、時間に限界がある中で、十分に説明することはなかなか難しいものです。あなたには言いたいことがごまんとあるはずです。あのときにあんなひどい事を言われたとか、あのときに口答えしたらその瞬間に殴られたとかいうことです。結婚してからずっとわずかな生活費しかもらっていなかったとか、育児にまったく協力しくれなかったとか、そんなことです。でも、そんないろんなことを整理せずにしゃべってもあなたの伝えたいことを十分に伝えるのは難しいことです。

 ですから、私としては調停申立書に簡潔にですが、離婚したい理由についての記載をしておくことにしています。あなたから聞き取ったそんな諸々のことを要領よくまとめて書いておくわけです。調停委員がそれを読んでくれていれば、言いたいことの骨子は伝わっていることになります。

 なお、余計なことですが、申立書は別として、その後に主張書面という書面を事前に提出しても、調停委員がこれに目を通さずに調停期日にのぞんでいることが何度かありました。私の感覚ではそう珍しいことではありません。

 一般に調停ではそんな書面が出ないことが多いので、調停委員も書面がないことを前提としているのではないかとも思います。でも、あなたと私とで何度もチェックしながら完成させて、提出した書面を読んでくれていないとがっかりはしますよね。調停委員にとっても、書面に目を通しておいてこちらの主張を知っておく方が能率を上げることができると思うのですが。

 

 少し話が脇にそれました。あなたと私は調停委員に離婚したいと思う理由を説明します。また、慰謝料だの財産分与だの養育費だの婚姻費用だのについても、その金額の根拠などを説明します。

 

 しばらく説明すると、交替ということになります。こちらが待合室に戻り、相手方が調停室に入ります。調停委員が相手方にこちらの主張を説明して、それに関する相手方の意向を確認します。

 この間、こちらはずっと待合室で待っているということになります。20分から30分程度ですが、私の経験で一番待たされたのは1時間半ということがありました。その日、待合室に入ると、調停委員がいらっしゃって、「今日はあちらから事情を聞きますから。」とおっしゃいました。そうかと思って待っていると、1時間半も経って、調停委員が呼びに来ました。調停室に入ると、最初に次回期日を決めますとおっしゃって、次回期日を打ち合わせました。その後、相手方がずいぶんごねているとの話があり、それでその日は終わりました。こちらが調停室にいたのは15分程度でししたね。

 そんなこともあります。ペットボトル持参は必須です。待合室に本持ってきて、読んでいる人もいます。

 色々打ち合わせることがあれば、その場である程度話しができます。ただ、大勢の人が待合室にいることがあり、そのような場合には、あんまり立ち入ったことを話すのがはばかられることもあります。打合せの必要がない場合、世間話のたねも尽きると、無言の業が続きます。

 調停委員の前で関係ない話をえんえんとすることはあなたのためになりませんが、待合室で会話が途切れたら、適当なことをしゃべっていただいて結構です。なんせ、私は口べたで世間話が苦手なんで助かります。

 

 しばらく待ったら交替。調停室に入って、調停員とお話しをします。調停委員は「あなたはこう言っていますが、あっちはこう言ってますよ。」とおっしゃってくれます。たいがいは、驚きます。先方がまったく事実無根のことを言っていることがあります。ある程度は本当だけど、大事な所で嘘八百ということもあります。こっちがあっちをどんなふうに思っていたのか、あっちには青天の霹靂だったりしますが、あっちがこっちをどんなふうに思っていたのかも青天の霹靂だったりします。あっちのせいで仕方なく家を出たのに、勝手に家を出ていったんだから慰謝料よこせとか言われてカッとなったりします。慰謝料欲しいのはこっちの方だ!

 あなたは当然、反論します。あっちの言ったことは嘘だらけだとか、あっちの要求は不当きわまりないものだとか。調停委員は反論はしませんが、あなたの言い分に分がないと思えば、その要求は取り下げた方がいいのではとか言ってくれます。

 ところが、必死で訴えているあなたからすれば、調停委員があっちの肩を持っているように思えます。だんだん腹が立ってきて、思わず調停委員にかみついたりします。歯で噛みつくんじゃないですよ。声を荒げて反論する方です。涙ぐみながら、こっちの主張を述べることもあります。

 でも、調停委員にかみついてもいいことはありません。あっちの主張をこちらに伝えるのは調停委員の職務。こっちの主張をあっちに伝えてくれるのも調停委員の職務。そうやって、争いのない点と、争いになっている点を整理しないと合意なんて成立するわけがありません。調停員はやんなきゃいけないことをしているだけです。

 調停委員は公正中立な第三者として行動しなければなりません。調停委員がどちらかの肩を持って、ひいきするなんてことはありません。極たまに変だなと感じることがないではありませんが。

 そんな公正中立な第三者である調停員を怒らせていいことはありません。味方についてくれるわけではありませんが、少なくとも調停委員にかみついて、敵に回すようにことはやめましょう。

 

 こんなことを繰り返す内に時間切れ。だいたい調停は1回あたり2時間程度で終わる場合が多いようです。時間切れになると、まずは次回の期日を定めます。東京家裁だと1ヶ月半程度先になることが多いように感じます。担当調停委員が裁判所に出頭する日で、こっちもあっちも出頭できる日を選ばなければなりません。裁判所はある程度は都合を聞いてくれます。シングルマザーで必死に稼がないと子どもが飢えてしまう人に、無理して仕事休めとは言いません。ただ、裁判所も忙しいのと、あっちもこっちもなかなか日があわない場合もあります。裁判所が夏休みに入ったりして、候補日が少なく、次回期日が3ヶ月先という場合もありました。

 

 シングルマザーで、すぐに婚姻費用、生活費のことですが、それをもらわなきゃ、食べていけない人にとって、次回期日がひどく先になることはそれだけで恐怖です。だからと言って、調停ではあっちにもっと時間を空けなさいとはなかなか言ってくれません。

 次回期日の決定と同時に、調停委員が次回期日までにしてくる宿題を確認してくれます。お子さんの学費について資料を提出せよとか、前の奥さんとの間の子に養育費を払っているのであれば、その資料を提出せよとかいったことです。

 それが終わったら、その日の期日は終了です。でも、帰る途中で相手方と会いたく有りませんよね。散々暴力を振るわれて、相手が恐くてたまらないときとかには、裁判所も配慮してくれます。どんな配慮かはここでは触れないことにします。恐い相手も読む可能性がありますから。

 

 期日が終わったら、とっとと裁判所から離れましょう。裁判所の近くにいて、あっちと会ったりするとたいへんです。

 

 こんな期日を繰り返します。裁判所は何年でもつきあってくれるわけではありません。だいたい6ヶ月経っても、進展が見られないようなら打ち切ろうとするようです。

 

 調停はお話合い。こっちの主張が100%通ることはありません。あっちの主張が100%通ることもありません。お互いにどっかで妥協して調停を成立させるか、それとも離婚訴訟をやるかという選択を迫られることもあります。

 婚姻費用と離婚の調停を同時に申し立てた場合、裁判所は婚姻費用の調停を先に進めようとします。シングルマザーと子どもの生存がかかっていますから。

 その婚姻費用の調停で、あなたが驚くような金額が決まる場合があります。少なくて驚くんじゃありませんよ。あなたに預金通帳も給与明細も見せない旦那。口を開けば、「給料が少ない。こんなんじゃやっていけない。」とか「なんでもっと倹約しないんだよ。」とか言う旦那。実際、毎月渡される生活費は雀の涙。あなたがダブルワークしてやっと、子どもたちにお腹一杯食べさせてあげられてました。

 ところが、婚姻費用の調停やると、誠実な弁護士があっちにつけば、給与明細だの源泉徴収票が出てきます。それを見て、あっと驚くあなた。「こんなにもらってたの。いつも、やっていけない、もっと倹約しろって言ってたのはなんだったの!子どもに150円のカレーパン買ったら、カレーパンならもっと安いのあんだろって怒鳴ってたわよね。ムキー!」

 でも、そんな源泉徴収票だの出てきたら、こっちのもの。家裁で使う「算定表」と呼ばれているシートがあります。あっちの年収とこっちの年収を前提として、線を二つ引くだけで、簡単に婚姻費用だの養育費だのの一応の金額がわかります。それを前提として、私立学校に通う費用だの特殊な負担をどこまで調停の結果に反映させるかは弁護士の腕の見せ所。

 その算定表で見ると、これまでもらっ

ていた金額の3倍の金額が適正な婚姻費用だということになったケースもありました。依頼者は大喜び!

 もちろん、旦那の収入が低い場合には、たいした金額は望めません。それに、旦那が仮払してくれる場合はいいのですが、調停が成立しないと婚姻費用を支払ってくれない旦那もいます。あなたの収入が低くて、貯金を取り崩してやっと食べている場合、早く調停を成立させるために、低い金額で我慢しなければならないといった場合もあります。

 

 婚姻費用の調停が成立すると、合意の内容は調停調書という書面に書かれます。この書面により、あなたは強制執行ができるようになります。旦那がサラリーマンであれば、給料の差押ができるようになります。

 サラリーマンが給料を差し押さえられると、裁判所の差押命令は会社に届きます。総務の人だの経理の人だのがそれを見て「あいつ、奥さんと別居して裁判沙汰になったんだ。それで生活費払ってないんだ。」って思います。かっこわる~~~。

 ですから、調停が成立すれば、強制執行をしなくても、できるだけきちんと払おうとしてくれる人が多いようです。

 

 さて、婚姻費用の調停は成立しました。めでたし。めでたし。でも、あっちは絶対離婚しないとか言ってます。その意思が固ければ、調停も進めません。調停委員もこれで打ち切りますかとか言ってきます。さてどうしましょうか。

 離婚しようと思って私の事務所にいらっしゃる方は、離婚したい一心です。仮に婚姻費用が決まっても、それがわずかな額であれば、その決意は変わりません。すぐに離婚訴訟の準備に入ります。

 でも、かなりいい額の婚姻費用が決まったら?もちろん、離婚しても子どもがあれば、養育費はもらえます。ただ、婚姻費用は養育費とあなたの生活費、養育費は養育費だけ。養育費だと金額が下がります。どうしましょうか。

 別居して旦那の面倒を見る必要もなくなりました。旦那が脱ぎ捨てたくっさい靴下を裏返して洗濯機に入れる必要もありません。ねちねち嫌みだのを言われることもありません。「お前はバカだ。」とか言われることもありません。暴力を振るわれることもありません。子どもたちとの平穏で安定した生活。別に彼氏がいて、早く離婚して6ヶ月待って再婚したいわけでもない。

 こんなふうになると、離婚にかける情熱は薄れる場合があります。そりゃそうですよね。婚姻費用の調停が成立したら、ちょっと一休みとか言って、そのまま離婚訴訟も提起せずといったケースもあります。

 

 婚姻費用の調停が成立して、離婚調停が不成立に終わった場合、離婚訴訟を提起しないと離婚できません。

 

 婚姻費用の調停が成立して、離婚調停が残ります。親権だの、養育費だの、年金分割だの、慰謝料だの、財産分与だの、面会交流だの、決めるべきことはたくさんあります。

 

 親権についてはほぼ確実にお母さんのものになります。たとえば、継続的に子どもに暴力を振るったり、モラハラをしたりで、子どもがお母さんをひどく怖がっているような場合でもなければ、お父さんということにはなりません。

 このことは、よくお母さんに説明するのですが、それでも、お母さんはずっと心配しています。何度、大丈夫だと言っても、心配していますね。母の子に対する思いを感じるときです。

 

 養育費は、お母さんとお父さんの収入を前提として、算定表で一応の金額が出ます。その金額を前提として、特殊事情で上げたり下げたりするということになります。

 

 年金分割は裁判所では半額ということになります。例外は見たことがありません。

 

 慰謝料については、相手のモラハラだの、DVだの、不倫だのを立証できるかがポイントになります。モラハラだのDVだのは家庭内での出来事なので、証拠が残りません。立証に苦しみます。お子さんがそれらを目撃している場合もあります。でも、小さい場合には証言ができない場合があります。仮に証言ができても、自分のために子どもを父親と敵対する形で裁判所に出頭させて証言させることはさせたくありませんよね。子どもに助けてくれと言うか、それとも離婚を諦めるか、究極の選択です。

 もっとも、母親が散々虐待された所を見ていたお子さんは、簡単に証人になってくれることもあります。母親への虐待は、子どもへの虐待です。

 旦那とやり取りしたメールの中にモラハラ的な言動が含まれていれば、それはよい証拠になります。旦那のことを友だちに愚痴ったメールが残っていれば、それも証拠です。

 また、区だの市だのの自治体の女性相談窓口に行って相談したことがある場合、その相談票がよい証拠になる場合があります。個人情報開示請求で入手することが可能です。

 

 不倫については女の勘は証拠になりません。ラブホテルや女性の部屋に出入りする写真があればベストです。そりゃ旦那はいろいろ弁解しますよ。でも、ラブホテルに入って、2時間後に出てきて、「ずっとトランプしてました。」と言って、納得する人いますかね。

 

 不倫の証拠が出てきて証明十分となっても、「その娘とつきあい始めた頃には夫婦仲は冷え切っていて、家庭内別居状態だった。」とかいう弁解が出ることがあります。法律的には婚姻関係破綻後の不倫は、婚姻関係破綻の原因にはなりえないといったような小難しい言い方をします。法律家は簡単なことを小難しく言って、普通の人にわからないようにして、稼いでいます

 でもこんな言い訳は通りません。実務では婚姻関係が破綻しているか否かは、別居しているか否かによってほぼ決まります。別居していれば、婚姻関係は破綻。別居していなければ、婚姻関係は破綻していないってわけです。「そんなことはない。うちは家庭内別居状態で、ろくに話しもしない。一緒に住んでても、夫婦としての関係はとうに壊れている。」と言いたい方はたくさんいるでしょう。でも、家庭内別居と言っても、子どものことでは言葉を交わし、参観日には一緒に学校に行っている場合もあります。旦那のくっさい靴下を洗濯し、食事の用意もするけで、子どものこと以外では、言葉も交わさない状態。互いに気持ちは全然離れているけど、子どものことだけでつながっている状態。これって家庭内別居ですか。夫婦としての関係は完全に壊れていますか。微妙じゃありませんか。

 家庭内別居と言っても、実態は千差万別。誰の目にも明らかな破綻と言えば、別居ってのは一応の判断基準としてうなずけるものではありませんか。

 いずれにせよ、同居して破綻しているとの主張をしても、なかなか認められません。

 

 ちょっと横道にそれますが、不倫の相手には慰謝料を請求できます。ただし、最近、最高裁で新しい判断が示されました。従来は不倫相手は婚姻関係が壊れたことについての慰謝料も払うべしということでした。ところが、この判断では、不倫相手はそれで奥さん(旦那でも同じですが)が傷ついたことについては慰謝料を払わなければならないが、婚姻関係が壊れたことによる心の傷についてまでは慰謝料を払わなくてもよいということになりました。どうなるかと言えば、認められる慰謝料の金額が減るということです。場合によりますが、不倫相手からはせいぜい100万ももらえればという印象です。

 なお、不倫相手に対する慰謝料請求は旦那への離婚調停でするわけにはいきません。不倫相手との話合いで解決しなければ、訴訟提起ということになります。

 

 旦那との関係に戻ります。財産分与については、互いの資産について、結婚した時から別居の時までに増えた財産があれば、双方の増加分を足して、2で割り、出入りを調整するといった方法によります。

 たとえば、旦那の別居時の預金残高が500万、しかし結婚したときに残高が200万あったとすれば、増加したのは300万だけだから、財産分与の対処となるのは300万円だけです。奥さんの預金は結婚時100万円、別居時200万円とすれば、財産分与の対象となるのは100万円だけです。

 この旦那の増加分300万円と奥さんの増加分100万円をたすと400万円。半額は200万円。奥さんは増加分の100万円を持っているから、旦那から100万円もらえば、互いに200万円ずつで公平。そんな手順で決めていきます。

 ただ、預金であれば金額で出るのでいいのですが、一軒家やマンションなんかの不動産だと、それをいくらと評価するかという問題があり、話は複雑になります。

 預金にしろ、結婚したのが15年前で、そのときに奥さんが100万円持っていたとしましょうか。しかし、その奥さん、預金通帳をとっていません。更新されると、捨ててしまうタイプの人。15年前の通帳なんかありません。銀行には記録は残っていますが、10年限り。結局、15年前の残高の立証ができなくて、別居時の残高200万円が財産分与の対象となるいったことになる可能性もあります。

 今、これを読んでいるあなた。預金通帳はできるだけとっておくことにしましょう。

 

 以上のような親権だのなんだのかんだのについて、双方で同意できるような条件がまとまれば、調停が成立します。このときの合意内容も調停調書に記載され、たとえば、いつ、いくらを支払えというような内容の定めについては、強制執行でぎきるようになります。

 

 すったもんだの挙げ句、離婚が成立すると、依頼者の方々は実に嬉しそうな顔をします。泥沼にはまり込んでしまいかけた人生を自分の努力で救い出したのです。嬉しいでしょう。お手伝いした私も嬉しくなってしまいます。

 

 調停調書を区役所だの市役所だのに持って行って手続きをすれば、晴れて離婚が成立ということになります。

 あなたの前には新しい人生が開けました。これからの人生が幸多いものであることをお祈りしています。

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