top of page
bnr-small.jpg

ブログ

性格の不一致


「うちには何の問題もありません。連れ合いと私とは互いに信頼しあっていますし、性格もきょうだいかと思うほど似ています。性格の不一致なんかありません。」なんておっしゃる方、お幸せでなによりです。きっと、弁護士の世話になんか決してならないでしょう。

 でも、そんなことをあなた方をよく知る方に言うと、ニコニコしながら、心の内で「それはあなたの勘違い。」と思っているかも知れません。

 なによりも、お連れ合いの前でそんなことを言っていると、ニコニコしながら、「こっちがどんなに我慢してるのかなんにもわかってないんだ。」とか思っているかも知れません。というよりも、ほぼ確実に思っているんじゃないでしょうか。


 そもそも、夫婦の性格が一致することなどないでしょう。男性と女性という違い、遺伝子も別、生んでくれた親も別、生まれ育った環境も別、通った学校も別、観ていたテレビ番組も別、親しく付き合っていた友達も別、仕事も別、なのに性格が一致するなんてのは、奇跡だと言ってもいいんじゃないでしょうか。


 新婚してしばらく経った夫婦の片方から、「こんな人がいるとは思わなかった。」とか、「こんな考え方をする人がいるとは思わなかった。」、「長く付き合ったのに、全然知らなかった。」とかいう声を聞くことがあります。

 洋式便器で小さい方をするときに、夫が立ったまま。掃除が大変です。グチるお気持ちはよくわかります。でも私の世代では小さい方をするときに腰掛けるなんて文化はありませんでした。ですから、「男だったらごく普通じゃないかな?」なんて思ってしまいます。男性の友人から、「結婚したら、妻がトイレでは座ってしろ。」とかうるさく言う人だったというグチを聞かされることがありました。そもそも奥様の実家では父親も兄弟も座ってしていたとのことです。

 私はトイレ掃除のたいへんさを少しばかりわかっているので、奥様のお気持ちはわかりますし、友人の気持ちもわかります。


 結局、夫婦の性格が一致するなんてことはおよそ期待できないんじゃないかと思います。夫婦は性格が一致しないのがあたりまえ。


 ただ、一致しなくても、長年連れ添う夫婦がほとんどでしょう。双方か片方が相手を理解しようと務め、双方か片方が相手を受け入れようと努めた結果ということでしょうか。


 とはいえ、夫婦関係が壊れる場合も当然あります。


 性格の不一致が裁判所で主張されるのは、第1に離婚理由となるか否か、第2に慰謝料を請求する理由になるか、その他いろいろです。


 まず、離婚理由となるか否かという問題は、それを理由に離婚できるかということです。法律家の力を借りて離婚するには、まず交渉、次に調停、それでもダメなら訴訟ということになります。

 弁護士としては、相談を受けた時点から訴訟にすれば勝てるか否かを検討することになります。もちろん、クライアントとしてはできれば訴訟は避けたいと思っているはずです。弁護士としても最初から訴訟にしようとは考えませんが、訴訟で勝てると思えばこそ、交渉や調停でも強く出られるというものです。


 訴訟で勝つには、専門的に言えば、「婚姻関係の破綻」が必要です。平たく言えば、夫婦としての関係が復旧不可能な程度にまで壊れているということです。

 たとえば相手に不倫があったとすれば、離婚は簡単です。相手がひどいモラハラやDVをしているような場合も同じです。こんな場合は、相手方が婚姻関係を壊しています。

 しかし、こんなことがなくて、単に性格の不一致だけを理由として離婚が認められるのはかなりむずかしいでしょう。

 裁判例に表れた、性格の問題点を挙げてみましょうか。勝気、気が短い、強情、陰気、頑固、無口、気弱、家庭的でない、内向的、消極的、内気、おとなしい、自己中心的、我まま、融通がきかない、しきたりの違い、成育歴などがあります(中里和伸著「判例による離婚原因の実務」p116以下)。問題となったというだけで、離婚が認められた例というわけではありません。

 勝気だの強情だのが婚姻関係が壊れる理由になるというのはわからないではありませんが、内気だのおとなしいだのということが婚姻関係が壊れる理由になるというのは言葉だけではよくわかりません。もちろん、相手のあることなので、相手がそんな性格に我慢できなかったので、訴訟になっているのでしょう。


 婚姻関係の破綻が認められるには多くの場合、別居してかなり経つことが必要なようです。一応の目安は5年と言われます。性格の不一致で仲が悪くなり、5年も別居していれば、離婚できるかなというところです。

 では、性格の不一致でひどく仲が悪くなったけど、別居まではいっていないという場合はどうでしょう。一つ屋根の下に暮らしているけど、互いに相手のいる部屋にはできるだけ近づかないようにしている。相手と会っても、互いに視線をあわせないようにしている。言葉をまったく交わさない。用事があるときには、できるだけ早口で要点だけを言おうとする。でも早口なんでよく聞き取れなくて相手が聞き返すと、そのことでいらついてしまう。リビングで会うと、2人ともできるだけ早くそこを離れようとする。こんなときに限って、出口でぶつかって押し合いへし合い。2人とも自分が先にリビングを出ようと焦っているから、互いに引かずにますますイライラ。出口で身体がぶつかるとめっちゃ気持ち悪く感じる・・・。ご本人達は真剣そのものですが、第三者から見たら、「新作コント?」なんて感想も。


 針のむしろですよね。互いに相手を心から嫌悪しているのに、子どものこともあるし、奥様の収入が乏しいので出て行くこともできずに一緒にいる。毎日、自分の運命を呪うばかり。

 私なんぞは「離婚した方がお互いのためじゃない?」なんて思ってしまいます。でも、相手は離婚に同意しない。どうしましょうか。

 裁判では、なかなか離婚を認めてもらうのは苦しいようです。「いろいろあるかもしれないけど、とりあえずは同居してるんでしょ。まだやり直せるんじゃない?」なんてことになる可能性大です。

 別居しない状態で性格の不一致だけを理由として離婚するのはなかなか厳しいようです。

 ただ、戦い方がないわけではないので、ご相談ください。


 次に慰謝料の問題があります。性格の不一致で離婚する場合には慰謝料請求は厳しいとお考えください。性格の不一致で夫婦としての関係が壊れたとしても、それだけであれば、どちらか一方だけに関係が壊れた理由があるとは言えないからです。

 とはいえ、この点についても、戦い方がないわけではないので、ご相談ください。


 


 

木村法律事務所 03-5524-1552

東京都中央区銀座1-5-7 アネックス2福神ビル5階



bottom of page