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共同親権


 さぁ、いよいよ話題の共同親権についてお話ししましょう。

 

1 あるクライアントがとにかく調停を速く進めてくれと何度もおっしゃることがありました。

まぁ、調停なんてことを始めて、時々、裁判所に行かなきゃならないなんて面倒の極みです。特に家を出てきて、職場も変えなきゃならないなんて羽目に陥った方にとっては、就職したばかりの職場で1ヶ月だの1ヶ月半だのに1回、裁判所に行くためにお休みをとらなくちゃなんてのは困ったもの。少なくとも半年ぐらいは皆勤して、自分の仕事ぶりを上司にも同僚にもアピールしたいところ。なのに、就職してすぐに、お休みをくださいなんて言うと、上司もいい顔しないし、しわ寄せが来る同僚もいい顔しない。お局様からのきつ~い嫌みも。

やっとのことで休みをとって裁判所に行けば、相手があることないこと、場合によってはないことないこと言いまくっているなんてことに・・・うんざりします。

調停を速く進めてほしい気持ちはよくわかります・・・なんて思ってました。

 

まったくの認識不足でしたね。そのクライアントは速く調停を進めなければ、共同親権になって、父親も親権を持つことになるんじゃないかと心配していたのです。

そりゃ心配だ。毎日のようなモラハラに毎週のDV、なにか言っても頭から「お前は間違ってる。馬鹿だなぁ。」なんていわれて、まったく話もできない相手。せっかく離婚しても、節目節目でそんな人と子どもの養育について話し合うなんて思っただけでうんざり・・・

 

2 ただ、私はあまり心配していませんでした。法律は改正されてすぐに効力が生ずるということはあまりありません。施行期日というのが後で決められて、それから効力が生じます。それまでに、国民の皆様に法律の内容をよく知ってもらうという期間です。それに、裁判所の負担が大きくなるような場合には、人員を増やしたり、部屋を増やしたりといったことも必要ですが、そのための期間でもあります。

共同親権の定めは2026年5月24日までに施行されることになっています。この記事がアップされるのが2024年9月ですから、まだ2年近くあります。

施行期日はさらに具体的に、何年何月何日というように定められます。それまでは離婚する場合には単独親権になります。お母さん、あなたが親権者です。

 

それだけでなく、法律が効力を発揮する場合には経過規定というものが定められます。共同親権の経過規定がどんな内容になるかは私にはまだなんとも言えませんが、たとえば、施行期日より前に調停を申し立てた場合とか、施行期日より前に調停を申し立てたけど調停は成立せず、それから何ヶ月か以内に離婚訴訟を提起した場合には単独親権だとかの定めです。

そんなふうになるんじゃないかなと思ってました。希望的観測かな・・・?

 

そんなこんなで、施行期日がまだ先で、経過規定も置かれる可能性があるという状況では、現在、調停になっている事件で共同親権になる可能性はあまり親権に、じゃなくて、真剣に心配する必要はないんじゃないかと思ってました。

 

3 心配していなかったもう一つの理由は、この事件では父親から子ども達や母親へのDVやモラハラが激しかったことにあります。しかも証拠もそれなりにあります。この場合、共同親権の定めが効力を持ったとしても、裁判所はほぼ確実に母親を単独親権者として認めてくれるでしょう。心配ないと思ってました。

 

共同親権制度が効力を持ったとしても、なんでもかんでも共同親権になるというわけではありません。

新設された法律の条文(民法819条7項)にはこう書いてあります。

 ① 父又は母が子の心身に害毒を及ぼすおそれがあると認められるときは単独親権

     モラハラであれ、DVであれ、離婚後に子に向けられる可能性がある場合ですね。

 ② 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれその他の事情により父母が共同して親権を行うとが困難であると認められるときは単独親権

     子に対するモラハラだのDVだのではなく、妻に対するモラハラだのDVだのが離婚後になされるおそれがある場合で、まともな話合いがむずかしい場合ですね。

 ③ ①または②ではなくても、共同親権とすることで「子の利益」を害すると認められるときは単独親権

たとえば、父が子には一流の高校だの大学だのに言って欲しいと望むが、母はそれよりものびのび育つことを優先して、ことごとに意見が対立してまとも話合いができなかったし、今後もまともな話合いができないおそれがあるような場合がこれにあたるでしょぅ。もっとも、教育以外の問題では静かに話し合えるということだとそうとは限らないでしょうが。

 

同居している間にモラハラやDVをくり返していた父親、調停になると自分がしたことを頭から否定して、逆に母親を嘘つきだとのししるになんてことがよくあります。裁判所から見ても、両親は激しく対立しています。いくら否定しても、結局、父親のモラハラやDVが立証されたような場合、父親にはその行いを改めることを期待できないというように受け取られ、離婚した後もそんなことをくり返すのではないかと思われても仕方ないでしょう。こんな場合は上記②にあたるでしょう。お母さん、我慢の日々がよい結果に結びつきました。あなたが単独親権者です。

 

私が処理しているケースでは、まさにこんな場合です。そもそも調停だの裁判だのをする場合には、まともな話合いができるのは稀です。そんな場合に、裁判所がそれでも、共同親権にしろという場合がどれだけあるかは疑問です。

こんなこともあり、そのケースでは私はあまり心配していませんでした。とはいえ、速く進めよっと。




 


 

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