こんなタイトルじゃ、なんの記事かわかりませんよね。失礼。
いよいよ離婚訴訟の第一回目、弁護士からは裁判所に出頭しなくてもよいと言われたけれど、絶対勝つとの意気込みを示したいと思って、行きました。法廷の傍聴席でしばし待っていると、廷吏さんに中に入るように促される。弁護士と一緒に、向かって左側の原告席につくと、裁判官が入ってきました。ありゃま、女性だ。なんとなく裁判官というと男性って先入観があったので、ちょっと意外。さて、ここでしめたと考えるかがこの記事のテーマです。
男性裁判官と女性裁判官とで裁判の判断が分かれることはありません。同じ事件の判決の内容が裁判官が男性か女性かで分かれることなんてことがあれば、憲法14条の法の下の平等に反します。そもそも、そんな問いかけそれ自体がジェンダーを固定するものの見方であって、それは女性差別主義者の発想だ・・・こんなところが、公式見解でしょうか。
実際、裁判官OBの前で男性裁判官と女性裁判官とで判断か分かれる場合があると言ったところ、とたんに眉をひそめて「それはいけませんねぇ。」とおっしゃってました。ちなみにその元裁判官は男性です。
もちろん、男性裁判官と女性裁判官とで必ず判断が異なる場合があるなんて、私も言うつもりはありませんし、そんな統計がとられたなんて話も聞きません。
ですから、ここで書くのは私の単なる印象論で、明確な根拠があるわけではありません。
離婚訴訟を提起する場合、慰謝料も請求します。
長年にわたるモラル・ハラスメント。なにか言えば、必ず「そんなことを言うのはお前がバカだからだ。」と言われ続けて十年以上。交際し始めた頃には、そんなこと言われても「てへっ」とか言って、可愛く舌を出したりした時期もあったような気もします。
でも、結婚して相手のメッキも剥がれてきたり、一緒に生活している内に意見の違いも目立ってくると、「お前がバカだからだ。」なんて言われると、ムカッとすることが多くなり、そのうちにいつもムカッとするように。でも、言い返したりすると、十倍になって返ってきて、しかも相手は行いを改める気配もない。子どもの前で口げんかなんかしたくないし、家庭の雰囲気を悪くしたくないと思い、ひたすら黙って耐えるだけ。すると、相手はムカムカしているあなたの気持ちにはまったく気づかず、むしろ、自分が正しいことをあなたも承認したんだと図に乗って、「お前がバカだから。」と言い続ける。
それに限らず、自分が言うことはことごとく否定される。「今日は雨が降るそうだから傘を持っていったら」と言ってもシカト。雨の中を帰ってきたと思ったら、やつあたり。「傘を持って行ったらって言ったのに。」とでも言うと、「それでも持たせるのが妻の役目だ。」とか言い張る。
子どもを叱っていると、邪魔をする。登校前に「ハンカチ持った。」と子どもに言うと、「そんなことどうだっていいだろう。」と怒鳴りつけられる。
こんな毎日、私だったら我慢できません。私って忍耐が足りませんか?
この依頼者の方、よく我慢したなぁとつくづく思い、訴えを提起しました。裁判官は女性でした。
相手は自分には悪いところはないと思ってるから、「離婚を求められるなんて心外だ。こっちが慰謝料を払って欲しいぐらいだ。」と言って、正面から争ってくる。ありがちなことですが、認めるべきことは認め、争うべきことは争うという姿勢ではなく、単に負けるのがイヤだから必死に戦うという姿勢のようで、要はメンツの問題。
原告と被告の尋問も終わり、判決が下されました。
離婚請求は認められました。慰謝料も満額ではないけれど、それなりの金額が認められました。
相手は控訴してきました。今度は高等裁判所で戦います。ただ、高裁では一審でするようにじっくり審理をすることは滅多にありません。この件でも第1回期日に出頭すると、その場で審理は終結、判決言渡期日は追って指定と言われてしまいました。その上で、和解期日を設けるので、出頭せよとのことです。
「判決言渡期日は追って指定」というのは、そこでは判決の言渡期日を決めないで後でその期日を決めるということです。地方裁判所だの家庭裁判所だのでは、主張も出尽くして証拠調べも終わり、和解の可能性もなければ、判決言渡期日が決められます。高等裁判所ではそうでもなく、この「追って指定」とされることがよくあります。とりあえず、和解のための話合いをせよ、和解が成立しないのであれば、判決言渡期日を後で指定するというやり方です。和解が成立すれば、訴訟はそれで終わりで、判決は言い渡されません。
追って指定の場合には、もう裁判官の頭の中では判決の内容が決まっているようです。
次の期日に裁判所に出頭しました。担当裁判官は男性で、和解室に入ってくると、あいさつもそこそこに「この事件で慰謝料は無理でしょう。」
「え・・・」
裁判官を説得しようとして言葉を尽くしましたが、担当裁判官は「こんなの普通でしょう。」とか言い出しました。「被控訴人は傷ついたかもしれませんが、この程度では法的に慰謝料は発生しないでしょう」との一点張り。被控訴人とは私のクライアント。「傷ついたかもしれませんが・・・」とはおっしゃるものの、クライアントが傷ついていると、その裁判官が本気で思っているとはあんま思えません。
「ははぁ。この裁判官、自分の妻にも毎日のように『お前、バカだなぁ』と言ってるんじゃないかな。」なんて下司の勘ぐりも脳裏をかすめる始末。
裁判官はすべて人格高潔で、モラハラなんかすることはないはずとか思ってる人いますか?たいがいはそうでしょうけど、妻に暴力を振るい骨折させた裁判官もいます(中村久瑠美著・「あなた、それでも裁判官?」)。
いずれにせよ、この事件での裁判官は慰謝料は請求できないはずの一点張り。このままでは慰謝料の部分では一審の判決が変更されて、1円ももらえなくなる危険もあるので、クライアントと相談して、少しだけ減額に応じました。
こんな事件は他にもありました。一審の女性裁判官は慰謝料を認めてくれたのに、高裁で出てきた男性裁判官は慰謝料なんか認められるはずがないとの一点張り。品性下劣な私としては、ここでも「ははぁ。この裁判官、自分の妻にも・・・」と下司の勘ぐり。
初めの方に書いたケース。毎日のように「お前はダメだ。」とモラハラ、その他にもモラハラ三昧、でも、DVまでは行っていない。
DVはなくても、こんな毎日が続くと、自信を失って心が折れてしまいます。自分には生きる価値がないとまで思いつめる方も。同居しているときには、自分が追いつめられていることも意識できませんでしたが、別居してしばらくすると本当の自分を取り戻します。長年の精神的な虐待に自分がどれだけ傷つき、苦しんでいたかに気づきます。惨めな思いと怒りに震えることもあります。
でも、上記の男性裁判官は、そんな女性の気持ちに全然思い至っていないようでした。一審の女性裁判官は慰謝料を認めてくれたのに・・・結局、女性の苦しみは女性にしかわからないということ?
ですから、妻を代理している離婚事件に女性裁判官が出てきてくれると、先行き明るいかなという気分になります。まぁ、女性裁判官も様々なので、少しだけですが。
なお、これは私の乏しい経験から申しあげているものです。男性裁判官と女性裁判官とではいつも判断が異なるなんて思っているわけではありませんし、そんな傾向があると断言できるわけでもありませんので、その点にご注意ください。「それはあなたの意見ですよね。」と言われたら、「そうです。」と答えるしかありません。
ただ、これを読んでいる女性のあなた、「どうせ男の人には女の気持ちなんかわかんないのよね。」なんて感じたことは一度だけですか?
木村法律事務所 03-5524-1552
東京都中央区銀座1-5-7 アネックス2福神ビル5階
Comentários