相手は「子どもに会わせろ。すぐに会わせろ。」と強硬に言い続け、一歩も譲りません。こちらも「子どもが嫌がっているので会わせません。」と譲るつもりはない。信頼できる人を挟んで話し合いを進めましたが、まともな話し合いにならない。
仕方なく弁護士に交渉を依頼しました。お金はないけど、法テラスというところに援助を求めたら、弁護士への着手金を立替払いしてくれました。
あっちも弁護士を立てて交渉しましたが、らちが空きません。子どもは会うのを嫌がるばかり。首に縄を付けて引っ張っていくなんて可哀想なことはできません。
すると、裁判所からの封書が届きました。あっちが調停を申し立てたとのことです。○月○日の午前10時からということです。
その日に裁判所に弁護士と一緒に裁判所に行きました。相手方待合室というとこで待っていると、女性が来て、名前を呼ばれます。「はい。」と答えると、「まず申立人から話を聞きますので、しばらくお待ちください。」とか言われます。弁護士が「あの方は調停委員です。」と教えてくれます。
待っていると、またその女性が迎えにきました。調停室という部屋に通されます。テーブルがあり、そのむこうに男性1名、女性1名が座っています。調停委員です。
自己紹介なんかしてから、調停が始まります。まずは相手がどんなことを言っているのかを調停委員が説明してくれます。相変わらず、「子どもに会わせろ。すぐに会わせろ。」と言っているみたいです。でも、弁護士もついたので、「子どもの健全な成長のためには親と面会させることが必要」なんていうことも言っているようです。
あなたは、「子どもが嫌がっているのに会わせるなんて、子どものためになるわけがありません。」と言って反論します。こうして、面会交流は子どものためにするものだということを両者が認めていることになりました。
実際、子どもは会いたくないと言っています。あなたとしては、絶対に会わせないと思っているわけではなく、子どもが会いたいと言えば会わせるのは当然だと思っています。おつれあいとしてはともかく、子どものことになると一生懸命な人で、子どもとの仲も割とよかったのです。
ただ、別居してからこれまでの間に「一緒に遊んでもらったら?おもちゃ買ってくれるかもしれない。」とか言ってみたのに子どもはかたくなに会うことを拒んでいます。何度か聞いてみたのですが、聞くと不機嫌になるようになりました。
相手になついていたので、アンビバレンツな思いをしているようです。度々聞くのも可哀想になります。
そんな子どもの様子を調停で話してみたのですが、相手は信じようとしません。同居している間、それなりに仲がよかったので、「あの子が会いたがらないなんてありえない。」なんて思っているようです。
こうなると第三者に子どもの本当の気持ちを確認してもらうということになります。家庭裁判所には家庭裁判所調査官という人がいます。家庭裁判所の裁判官だの書記官は法律の専門家ですが、調査官は心理学だの教育学だの社会福祉学といった観点から調査にあたる人です。
この調査官が、たとえば家に来て子どもと面談して、その気持ちを把握するということになります。
もちろん、調査官は子どもとは面識のないおっちゃんやおばちゃん、おにいさんやおねえさんだったりします。子どもが初対面の人に心を開いて、きちんと自分の気持ちや考えを言えるのかしらなんて思った方、その心配はもっともです。
特に、こんなふうな面会について子どもの気持ちを確認する際には、まずは親がある場所で会いますが、その内に親のいない場所、たとえば子ども部屋なんかで調査官と子どもの二人きりになって話します。親がいないと不安に思うんじゃないかと思うのも当然です。
でも、調査官は心理学だの教育学だのを学んだ人です。子どもの心を開かせることについて、そのような勉強を重ねています。調査官の先輩からテクニックを教わることもあるでしょう。あまり心配することはありません。
こうして、調査官は子どもの気持ちを確認して、それを報告書にまとめます。これについてはコピーをとることもできます。それを読んで、相手はすぐに面会することを諦めることもあるでしょう。その場合には、子どもが面会を希望した場合には会わせるというような調停を成立さて終了という流れもあるかと思います。
でも、どうしても相手が諦めない場合、調停は成立せず、審判という手続きに移ります。調停は話し合い、審判は裁判官の判断です。裁判官は子の気持ちは尊重してくれますが、だからと言って会わせなくてもよいという判断はなかなか下せないかと思います。
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