よく質問されます。「友達から働かない方が生活費はたくさんもらえるんだから、働かない方がいいんじゃない。」と言われましたと・・・
婚姻費用だの養育費だのは、基本的には父親と母親との収入額によって定まるのですから、母親の収入が低ければ低いほどその金額は大きくなります。これは確かなこと。
ただ、だからと言って、働かなくてすむお母さんはあまりいません。子どもを育てるには当然、お金がかかります。働かないと食べていけない方がほとんどです。1人で3人のお子さまを育てているシングルマザーたる依頼者はこれまでの事件で3人いらっしゃいました。
こんな状態であれば、103万の壁など気にしていられません。超えた分、全部税金にもってかれるわけじゃなし。少々税金払っても、残るお金でお腹いっぱい食べさせたり、塾に通わせたりしなきゃ・・・
でも、中には働く必要のない方もいないではありません。なんだかうらやましくなるぐらいたっぷりした貯金を持っていたりする方もいらっしゃいました。
専業主婦を長くしていて、同居している限り働く必要はなし、別居した今ではもちろんいずれは働く予定だけど、婚姻費用や養育費が決まるまでは働かないでおこうという方もいらっしゃいました。
また、転職すれば収入が大きくなる可能性があるのに、転職に迷っている方もいらっしゃいました。
今後も働かずに一生生きていけるのであれば、私はうらやましいと思うだけで、特に意見は申し上げません。
前に私が勤務していた事務所で処理していた事件でのことです。財産分与や慰謝料をまとめて、解決金という名目で3億円という和解案が夫側から提案されたことがありました。3億円!3の後に0が8個!「たこの吸盤は8個より多いよなぁ」とかとっさに思ってしまいました。たこのはっちゃんじゃないんだから・・・
私だったら、すぐに飛びつくような話です。かなりご高齢のご婦人だったので、それだけあれば、それどころか、かなりいい老人ホームに入って、不自由のない老後を送ることもできたはずです。
でも、その奥様は「そんな金額じゃ私の青春は取り戻せません。」とおっしゃって、その和解案を蹴ってしまいました。やや芝居がかってますかね。でも、本当のことです。若い頃から尽くし続けたのに夫はそんなことは知らぬふりで出て行ったということでした。
確かに夫の資産隠しが強く疑われるケースで、その奥様の推測が正しければ、もっともらえた事案でした。でも、証明ができない案件でした。お気持ちはわかります。でも、3億円という金額は証明できる範囲をかなり超えていました。
こんなケースであれば、私から言うことはありません。
このケース、その後どうなったか気になりますよね。私もぜひ知りたいと思います。ところが、このケースは事務所のボス弁護士が自ら担当していました。そのボス、辞任してしまいました。話をまとめれば、それなりの報酬がいただけたのに・・・どうしてなのか、未だにわかりません。
いずれにしろ、辞めてしまったので、その後どうなったのかは私にはまったくわかりません。
ただ、離婚する際に夫から支払われる金額が数百万円程度だったら、奥様にとって大事なのは今後、どうやって稼いで生きてゆくかでしょう。40代で離婚したりすると、この程度の金額ではとても一生は暮らせないし、ぜいたくなんかとんでもない。
長く専業主婦をされていた方の中には働く上で必要なスキルが身についていない方もいらっしゃいます。今、求職活動をしようとすると、パソコンの操作ができることは基本として、wordやExcelを使いこなせることはマストであるようです。ところが、パソコンには触ったことはあるけど、ゲームとメールしかしたことがないって方もいらっしゃいます。ネットでBTSの写真ひろってくるのが趣味だけど、wordやExcelなんてなんのことかわからないという方もいらっしゃいました。
これでは就職もなかなかできないでしょう。仮にできても、きつい仕事でしかも給料は安いなんてことになりそうです。老後が不安になりますよね。
仮に2000万円もらえたとしても、安心はできないでしょう。リタイアした後の生活には3000万かかるという週刊誌の記事がありました。自分の生活は自分の給料で支え、この2000万は大事に残しておくしかないということになりそうです。
結局、生涯のことを考えれば、一生懸命働くのが一番という平凡な結論に落ち着きそうです。離婚しようとして、裁判所に行かないで話し合い、それがまとまらずに調停、それもまとまらずに訴訟なんてことになると、2~3年はかかることになります。この間、まつたく働かないと、職業の経験を積むこともできません。その後のことを考えると不安じゃないでしょうか。
また、これは私の印象論ですが、家裁は働かない女性に対する視線が厳しいように感じます。
言うまでもなく、家裁の職員は裁判官にしろ、書記官にしろ、調査官にしろ、事務官にしろ、運転手さんにしろ、みんな働いています。女性裁判官も女性書記官も女性調査官も女性事務官もいます。運転手はどうかな?
これらの女性スタッフはみんな働いて、生活費を稼いでいます。こんな人々が、別居しても働かずに夫が支払う婚姻費用だけで暮らしている人にどんな視線を向けるかを想像してみてください。
夫が高収入で、離婚したときにかなりいい金額の養育費をもらい、しかも財産分与で家をもらった方がいらっしゃったということです。この養育費で子どもも養育できるし、自分も暮らせるしで、10年以上もほとんど働かないで暮らしていたということです。
このお母さん、子どもの進学費用がかかるので養育費を増額せよとの調停を申し立てました。すると、元夫からは収入が下がったので、養育費を減額せよとの調停をくらいました。結果は、元夫の代理人弁護士がびっくりするくらい下がったということでした。そもそも増額の調停を申し立てたことでやぶ蛇になったわけです。
その代理人弁護士が言うには、審判書にははっきり書いてないけど、高額の生活費をもらい続け、いわゆる無為徒食の生活を続けていたので、担当女性裁判官が厳しい視線を向けたんじゃないかと言っていました。
私も似たような経験をしたことがあります。いや・・・私が遊んで暮らしてたら裁判所で冷たい扱いを受けたわけではありません。そんな事件を処理したことがあるというだけです。
なんだか働くのが一番という平凡で説教くさい結論になってしまいましたね(^_^;
木村法律事務所 03-5524-1552
東京都中央区銀座1-5-7 アネックス2福神ビル5階
コメント